検査嫌いのぼくではあるが、「検査も使い方によっては有効」と思うこともある。
たとえば、アメリカでは「症状のない人が健康診断を受けるのはほとんど無意味」としている。日本のメタボ健診の受診率は48.6%。4項目すべて健康な人は17%しかいない。ちょいメタボのBMI27くらいの人は本当は健康で長生きの人が多いというデータがあるのだが、この人たちも健診で引っかけてしまっている可能性がある。メタボ健診には、改善すべき点があるのだ。
しかし、健康診断は「意味がない」とは言い切れない。健診のデータをもとに生活習慣の行動変容を起こさせることができるならば、健診は大事だ。検査はやっただけでは意味がない。そのデータを活用するかどうかが大事なのだ。アメリカの医師は長野県の健康づくり運動なんて知らないのだろう。
検査は上手に生かせば役に立つ。だけど痛い検査はやっぱり嫌いだ。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。最新刊は『検査なんか嫌いだ』(集英社)。
※週刊ポスト2017年3月17日号