スポーツ

マラソン日本記録が15年間も更新されていない原因

マラソン界のレジェンド・瀬古利彦氏の提言が波紋

 2月26日に開かれた東京マラソンは、アフリカ勢と日本人選手の間に大きな実力差がある現実を改めて浮き彫りにした。優勝したケニアのウィルソン・キプサングのタイムが2時間3分58秒で、上位7人は全員アフリカ勢。日本人最高位は井上大仁の2時間8分22秒(8位)。

 現役時代、国内外のマラソンレースで15戦10勝の戦績を残したレジェンドで、日本陸連の「マラソン強化戦略プロジェクト」リーダーの瀬古利彦氏(DeNAランニングクラブ総監督)に取材すると、「箱根駅伝に『42.195km区間』をつくったらいい」という衝撃的な提言が飛び出した。つまり、学生が駅伝の距離の練習に専念し、マラソンの距離向けの練習をしないことに懸念を示したのだ。取材を進めると、瀬古氏の“提案”に意外な人物からツッコミが入った。

 瀬古氏の「一番弟子」であり、早稲田大時代はエースとして活躍、2010年度の学生駅伝で監督として母校を三冠(出雲、全日本、箱根)に導いた渡辺康幸氏(2015年から住友電工監督)だ。

「瀬古さんがやった練習メニューを今の若者にもやらせることができれば強くはなるでしょう。でも今は世界のトップチームが様々な知識を駆使して行なう練習を日本の選手もウェブで知ることができる。そういう知識を得た選手に走り込み一辺倒で押し付けようとしても、なぜそれが必要かを説得できない限りやらせることはできません」

 さらに、この20年ほどで世界のマラソンレースは高速化。その間、日本では新たな指導法が確立されず、世界と大きく水をあけられたと渡辺氏は続ける。

「スタミナだけでなんとかなったのは30年前まで。現在はスピードがないと話にならないのに、日本は高速化への対応が遅れたから国際レースで大差をつけられる。注目選手の失敗を叩く空気と相まって、有力なランナーでもマラソン挑戦に希望を持てない。それが、日本記録が15年間も更新されていない原因です」

関連キーワード

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン