今年、43歳を迎え、中日の岩瀬仁紀とともに球界最年長選手となる井口資仁(千葉ロッテマリーンズ)。ここぞという場面での一振りとともに、チームは井口にリーダーとしての役割も求めている。井口自身も客観的視点で、その役割の意味をよく理解している。
「もちろん選手である以上、毎シーズン全試合フル出場するつもりで準備します。最初から代打でいいと思っていたら、こんなに練習しません。でも、実際には全員がスタメンになれるわけではないので、自分はチームから与えられた仕事をいかに完璧にこなすかに集中する。若い選手にアドバイスしたり、彼らのメンタルをフォローしたりすること。それがチームにおける自分の役割だと自覚しています」
昨季途中、中村奨吾や細谷圭といった若手が調子を崩しスタメンから外され、伊東勤監督から外出禁止令を出されたことがあった。井口は次の遠征試合のタイミングで、監督に断わりを入れて彼らを食事に連れ出した。
「彼らが開幕メンバーになり自信を持てたところで最初の試練を迎えた。そこから早く立ち直ってほしかったんです。ただ、グラウンドでは絶対にアドバイスしません。そこはコーチの領分を侵してしまうことになるので。だから後輩と話をするのは食事の場が多いですね。キャンプ中はほとんど毎日、夕食に出かけています。くだらない世間話から野球の話まで。基本的に質問されたら答えるというスタイルです」
沖縄自主トレでの日課である早朝ランニング。集合時間に真っ先に姿を現わしたのが井口だった。参加メンバーの一人である大崎雄太朗(西武)は、「最初は6時20分集合だったんですけど、井口さんが早く来るので、どんどん開始時間が早くなっていったんです」と苦笑いする。このエピソードに、井口がどんなタイプのリーダーであるかが如実に表われている。
「トレーニングのために、距離を測ってコーンを置いて準備したり、ネットの片づけをしたり、井口さんが率先して動いてくれるので、僕らがやらないわけにはいきません」(大崎)
「僕らにアドバイスするのは、井口さんにとっては簡単なはず。でも、そうしないのは『見て盗め』と言ってくれているんだと思います」(明石健志・ソフトバンク)
「僕らでもきついメニューを、10歳以上も年上の井口さんが、先頭に立ってこなしていく。絶対に手を抜かない真面目さを尊敬しています」(清田育宏・ロッテ)
皆、口を揃えて「井口さんがやっているから手を抜くわけにはいかない」という。多くを語らず、行動で示す。率先垂範──。それが井口の実践するリーダー像だ。