私たちをいつ襲い来るかもわからないアレルギー。その治療法は、従来、症状を抑える対症療法がほとんどで、完治させることは不可能と考えられてきた。しかし今、その常識が変わろうとしている。根治できる新たな治療法が続々と登場。命さえ奪うこともあるアレルギーが“治せる病気”になってきているのだ。
食物を「食べる」ことは、治療のみならず予防にもなるというのも、“新しい常識”になっている。国立成育医療研究センターは昨年12月、「離乳初期から微量の卵を食べることで卵アレルギーを予防できる」という研究結果を発表した。
生後4、5か月までにアトピー性皮膚炎を発症した乳児121人を二群に割り付けた研究で、一方は生後6か月から加熱した卵の粉末を毎日少量(ゆで全卵0.2~1.1g相当)摂取し、もう一方は見かけがそっくりなかぼちゃの粉末を摂取し、卵は食べなかった。
研究に参加した国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科の成田雅美医師が説明する。
「1才の時点でゆで全卵32g相当の負荷試験をすると、卵を食べていたグループの卵アレルギー発症率は、食べないグループよりも8割も低かった。生後6か月時に卵アレルギーになりかかっていた子供が、微量の卵を食べたことで1才までには治ったことになります」
以前は子供がアレルギーになるのを防ぐために、母親が妊娠中や授乳中から特定の食べ物を避けるよういわれていたが、
「特定の食べ物を開始する時期を遅らせる必要はありません。むしろ食べたほうがいいということが今回の研究からもわかりました」(成田さん)
またこの研究では乳児にアトピー性皮膚炎の治療を徹底して行い、皮膚から卵成分が入るのを防止したこともポイントだったと成田さんは言う。