入り口に、蓮の花が浮かぶ人工池。館内に入ると、この日は女性2人が待機する受付カウンターと、テーブルや椅子があり、春の花々が飾られている。こざっぱりした企業の受付のようだ。法衣に輪袈裟姿のお坊さん──副住職の東恵秋(ひがしえしゅう)さん(68才)が出て来られ、ああここはお寺だったとわれに返る。
「岐阜に本坊のある、室町時代開祖の浄土真宗東本願寺派・無量寿山光明寺の東京本院です。京都にも本院があり、ここは2015年の6月に開設しました。昔のお寺のように勉強や娯楽、情報発信などの場となるとともに、お墓参りを特別な行事ではなく日常のものとさせたい。いわば、仏教ルネサンスのお寺なんです」
いきなり横道にそれるが、関西出身の私は「京都にも本院」に反応した。場所を聞くと左京区の八瀬だそう。実は若い頃、旅行情報誌の仕事で毎年春と秋にそのエリアの観光寺院を隈くまなく取材に回ったが、光明寺というお寺は記憶になかったなあと思いきや、「10年ほど前に料亭を買い取り、お寺に改めたのです」と東副住職。ずいぶんやり手のお寺なんだ、とひとりごちる。
◆旧来の墓地につきまとう暗さは皆無
エレベーターに乗り、まず案内されたのが、5階の「如来堂」。エメラルドブルーの壁を背に、阿弥陀如来が宙に浮かぶ斬新な光景に目を見張る。まだまだ新しく、金色に光り輝く様は、不謹慎かもしれないが「仏様アートだ」と思った。一方で、柵など遮るものが一切ないため「すぐそばに仏様」と親近感も感じる。
傍らにグランドピアノが置かれていた。「この部屋で、土曜コンサートや日曜仏教礼拝などを行っています」と東副住職が説明してくれる。
「来る人、いらっしゃるんですか?」と質問を投げると「もちろんです。どなたも参加していただける形なので、お墓を買った人だけでなく、ネットで知って興味を持ってという人も来られていますよ。毎回20人ほどで埋まり、手応えを感じています」。
4階に阿弥陀仏を祀る荘厳な本堂、3階に法隆寺金剛壁画(模写)などを展示したギャラリー…。確かに「高級感」があふれている。しかし、旧来の木造のお寺に慣れている身としては、少し落ち着かない。
お墓の参拝所は地階にあった。いわゆる自動搬送の形式だ。