館内の保管庫に、骨壷を入れた箱(「厨子」と呼ばれる)が収納されている。ICカードを1階の受付横にあるパネル内の所定位置に入れると、「珊瑚」「紫晶」などと名付けられた8か所の参拝所のうち、その時に空いている箇所が表示され、選ぶ。その足で、選んだ参拝所に行くと厨子が届き、自動で墓石にセットされる──そんな参拝の流れを業務統括推進本部部長の木下尚子さんに聞きながら、地階に降りた。
左右の通路に、縦格子の木戸のようなフェンスで区切られた参拝ブースが4つずつ並んでいる。西側は、窓の外に地上から続く滝が見えて明るく、東側は通路の壁面が岩状でしゃれている。
「紫晶」の参拝所に入った。広さは約2.5m四方。4、5人がゆったり入れる半個室で、床が大理石、壁面は美しい木目。椅子も4脚置かれている。所定の場所にもう一度カードを入れると、すわ。正面の扉が開き、台の上に墓石が現れた。
バックの壁いっぱいに、紫水晶をイメージする抽象画が描かれ、実に明るい。旧来の墓地につきまとう暗さなど皆無だ。
「最高級の黒御影石です」と木下さん。
墓石の中央、約25cm四方の部分に「荻野家」との刻字。「荻野家」は見学用のダミーだが、ここには家名でなく「愛」「永遠」「ありがとう」などどんな言葉でも刻字できる。墓石自体は固定されており、この部分だけが、保管庫から自動搬送されてきたのだ。骨壷が入っている厨子の側面に当たる。品よく生花が飾られ、墓前に水が流れ、焼香できる電子香炉もある。
「手ぶらでお参りしていただけるのです。外のお墓は、お骨が墓石の下に納められているので、そちらには目を向けずに竿石に向かって手を合わせるわけですが、ここではお厨子がちょうど目の高さですから、きちんと故人様に手を合わせられるんですね。もっとも“写真参り”のようになっちゃうかたも多いようですが」(木下さん)
傍らに立てかけられた液晶パネルに、故人の写真が数枚代わるがわる映し出されていた。もし、これが私の両親のお墓なら、あの写真とこの写真を入れよう、なんて考えてしまっている自分に苦笑いする。
※女性セブン2017年3月30日・4月6日号