彼らが比較的早い段階で活躍できるのは、そのキャラクター造形にあるのかもしれない。いわば「デフォルメの極致」ともいうべきか、みな振り切っているのだ。平野ノラはバブル期の女性を生き、ブルゾンちえみはニューヨーカーを体じゅうで表現。サンシャイン池崎は、過去多くの芸人が生み出してきた「自己紹介」ギャグを究極まで高めている。そうした突き抜けたキャラは爽快感があるし、またビジュアルインパクトも強いので一目で覚えてもらえる。
しかし、アクの強いキャラを演じている芸人は、このままでいいのかと悩んだり、そのキャラに飽きてしまうと言われているが、今挙げた彼らには「迷わず自分はこれでいく」という潔さを感じる。その点に関して平野ノラは、「当時の女性たちのように自分が一番良い女と思っているキャラだから絶対にブレない」と雑誌のインタビューで語っている。つまり彼女でいえば単にバブルを笑いの道具にしているのではなく、「あの頃の人間のまま」。また、制作側からキャラを押しつけられたり、「作られた感」がないので、芸人個人の人間的な魅力も透けて見える。
古くは「ハナ肇とクレージーキャッツ」で知られ、1990年代には中山秀征、ネプチューンを輩出したナベプロ。そんな古き良き老舗お笑い事務所に変化が訪れたのは2004年のことだった。「ワタナベコメディスクール」が開校されたのだ。そこからアンガールズ、ハライチ、あばれる君、イモトアヤコなどが巣立っていった。
◆「本人が気づいていなかった個性を引き出す」方針