皮肉なことに、朴正煕政権をめぐる経緯は、彼の娘である朴槿恵氏のスキャンダルに端を発する今の状況に似ている。韓国に詳しい評論家の室谷克実氏は指摘する。
「2度の軍事クーデターは、どちらもその始まりに国民のデモがありました。実態としては、過去のデモは暴動に近いようなもので、それと比べると、今回の朴槿恵に対するデモは、韓国史上初めての統制が取れたデモらしいデモでした。
ただし、その統制には親北勢力の介入があった。親北の色合いの強いデモで朴槿恵政権は倒れ、その流れがあるからこそ文在寅氏が大統領になろうとする状況になっているわけです。文氏には、盧武鉉政権当時、北朝鮮への国連非難決議の賛否について大統領秘書官だった文氏が北朝鮮の意向を聞き、その結果として棄権したのではないかという『おうかがい疑惑』がある。
こうした状況で、文大統領が親北朝鮮の政策を打ち出した場合、軍部が、『国家保安法違反である』との名目でクーデターを起こすことは十分考えられます。また、軍の保安司令部(現・機務司令部)が文氏と北朝鮮とのつながりを捜査し、その証拠が出てきた場合、軍部が動きを取るという可能性もある。今の韓国はそれほど不安定な状況なのです」
当然、その際には相次ぐミサイル発射で周辺国を牽制する金正恩も何らかの動きを起こすだろう。韓国の政情不安は東アジア全体の混乱を招く。日本にとっても、いよいよ対岸の火事では済ませられなくなってきた。
※週刊ポスト2017年4月14日号