◆「何度も泣かされた」
週末、再び明洞に足を運んでも状況に変化はなかった。ロッテデパート前で入庫待ちの列を成す中国人のツアーバスも見当たらない。デパート1階の化粧品売り場、アクセサリー売り場、靴売り場……。両手に買い物袋をぶら下げ闊歩していた中国人が、忽然と姿を消した。
デパート上層階にある免税店も人影はまばらだ。女性販売員が打ち明ける。
「昨年2月、急増する中国人客に対応するため2フロアだった免税店を4フロアに拡張した。客の8割は中国人で、人気ブランドショップは入場制限をかけるほどの混雑ぶりだったが、3月15日を境にぱたりと客足が途絶えた。今年3月の売り上げは例年同期の6割ほどではないか。私は中国語スタッフとして採用されたため、解雇されると思う」
女性販売員は自身の雇用に不安を隠しきれない様子だが、一方で、中国人に対する怒りも滲ませた。
「私は、中国人客に『もっと上手な中国語を話せ!』などとなじられ、泣かされたことが何度もある。正直、彼らには良い印象を持っていない。もう韓国に来てほしくない」
デパート地下の惣菜売り場で働く50代の女性も、こう本音を漏らす。
「中国人は混雑する店内でもわが物顔でキャリーバッグを引いて歩くし、味見ばかりで商品を買わない。注意すると逆切れするし、いなくなって清々した」
もともと悪評が目立つ中国人観光客だが、THAAD問題で中韓関係が険悪化してからは、韓国人とのトラブル増加が顕著になっているという。中国人ツアー担当の女性ガイドが語る。
「少数だが、昨年後半から、THAADや違法中国漁船への射撃事件など、韓中の摩擦をネタに絡んでくる客が出てきた。『韓国は調子に乗りすぎた』『中国と戦争して勝てるのか』などと挑発されても言い返すことができず悔しかった」
※SAPIO2017年5月号