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豊臣秀吉 「かわいい息子と口吸いできずに残念」の手紙

秀吉も子どもには弱かった?

 豊臣秀吉といえば天下統一を成し遂げた日本史上の大英雄。「戦国一の知恵者」とも呼ばれる秀吉だが、子どもにはメロメロだったようだ。第二子・拾(ひろい)に宛てた手紙では、その様子がうかがえる。

【現代語訳】
〈(追伸)おかか(淀殿)には手紙でも申しますが伝えてください。乳をよくよく飲ませなさいとお申しください。

(本文)先日は普請場まで見送ってくれて満足です。しかしながら人が多くて、思いのままに口吸い(キス)ができなかったのが残念で、忘れられません。まんかか(北政所)へも、言伝を確かに届けました。すぐに行って、口を吸いましょう。……馬を見たければ、そちらへ引き寄せてご覧なさい。……そなたのことをなんでも見る鏡があって、見えていますよ。おかかに口を吸われてはなりません。油断なさるな。〉

 豊臣秀吉は手紙好きだった。家族など身近な人々に自筆でしたためた手紙は自由奔放な言い回しが多く、秀吉の素顔に触れられる。

 なかでも、53歳で得た長男・鶴松亡き後に生まれた第二子・拾(秀頼)に宛てた手紙からは、過剰なまでの愛情が伝わってくる。子に「口吸い」(キス)をしていたというのにも驚く。

「子供に口吸いという愛情表現をしていた戦国武将は、後にも先にも秀吉しかいないと思います。晩年にできた子供ということもあってより深い愛情が感じられ、現代にも通じるものがあります」(静岡大学名誉教授・小和田哲男氏)

 拾の母である淀殿に対しても、嫉妬の気持ちを露わにしているのが微笑ましい。手紙を受け取った拾は、まだ字も読めない乳飲み子だった。

■取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2017年5月5・12日号

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