「野球選手ならまだしも、政治家は説得力のある字を書くのも資質のうちですし、東野圭吾さんの『手紙』に社内コンペで選ばれて殺人犯の手紙を書いた編集者の字とか、逆に職種や立場によって字の見え方が違ってくるのも面白いですよね。
僕が個人的に憧れるのは荒木経惟さんとか寄藤文平さんの字。普段の字とは使い分けている寄藤さんの営業用の字は、蛭子能収さんの字を手本にデザインしたらしい。まずは自分が書きたい字を見つけることが大事ですね。いつかは僕も僕にしか書けない味のある字が書きたいし、ぜひ皆さんにもイイ感じの字を見つけてほしいなと思うんです」
そんな答えともつかない答えに行き着く本書の旅は、途方もない右往左往ぶりにこそ、意味も面白さもある。予断や憶測を避け、脈絡のない現実や細部に光を見る彼は、おそらく根っからのリアリストで冒険者なのだろう。
【プロフィール】しんぼ・のぶなが/1964年大阪生まれ。東京大学文学部卒。自身灘高→東大だが「頭云々よりせっかちな人は字が汚かったかな。中高生男子の字は基本、汚いし」。出版社勤務を経て「流しの編集者兼ライター」。マンガ解説者・南信長名でも新聞等で活躍。著書に『笑う入試問題』『東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?』『国歌斉唱♪「君が代」と世界の国歌はどう違う?』、編書に西原理恵子著『できるかな』シリーズ等。173cm、53kg、O型。
構成■橋本紀子 撮影■国府田利光
※週刊ポスト2017年5月26