──もっとも重要なインフラが江戸時代に構築されたわけですね。
松平:おっしゃる通りです。そして、繰り返しますが、それが可能だったのは、鎖国政策によって、原田さんがおっしゃる「パックス・トクガワーナ」が270年間も続いたからです。
──江戸時代の識字率は同時期のイギリスなどに比べてはるかに高かったというデータがありますね。
松平:そうした教育水準の高さを背景に、人材面でも素晴らしい幕臣が輩出しました。たとえば岩瀬忠震、水野忠徳、小栗忠順の「幕末の三傑」。岩瀬は日露和親条約、日米修好通商条約を締結し、水野は日蘭、日露、日英、日仏修好通商条約すべてで調印し、小栗は世界一周を経験し、軍事の要職を歴任し、海軍国日本を作るべしと提唱しました。
後に日露戦争に勝ったとき、東郷平八郎はわざわざ小栗の孫たちを呼び、「日本が勝ったのはあなた方のお祖父様のおかげだ」と称えました。明治以降、日本が列強に伍していく土台を作ったのは、彼ら徳川の優秀な官僚だったのです。