──精神面についてはどうですか。

松平:著者の原田さんは司馬遼太郎さんに批判的で、〈「維新」至上主義の司馬史観の罪〉と書いていますが、その司馬さんにして、「賊軍」会津の人の品格、武勇、魂の高潔さ、どれもが素晴らしいとして、「封建時代の日本人がつくりあげた藩というもののなかでの最高傑作」と絶賛しています。

 歴史に詳しい黒鉄ヒロシさんも以前、番組でご一緒したとき、新撰組の土方歳三について、時流に上手く乗ることをあえて拒否し、「賊軍」側について戦死していった「そこに武士の魂を見る」とおっしゃったのを思い出します。

──「賊軍」側に立つと、歴史が違って見えてくるわけですね。

松平:半藤一利さんが『幕末史』という本の冒頭で、「自分は戦前、官軍、賊軍という薩長史観を仕込まれた。しかし、賊軍であった父の出身地長岡では、官軍は正義でも何でもなく、無理やり喧嘩を仕掛け、強奪していった泥棒だと言われている」という意味のことを書いておられます。

 そのように立場が異なれば違う見方ができるのに、勝者の立場だけで見ると、敗者が築いてきた古い歴史は全て駄目で、勝者が築く新しい歴史だけが正しい、ということになってしまう。これは江戸と明治の関係だけではありません。時代がどんなに変わっても、いいものはいいんです。それをはっきり言える勇気を持つ人だけが歴史を語れるのだと思っています。

【PROFILE】1944年生まれ、東京都出身。早稲田大学商学部卒業。元NHKエグゼクティブアナウンサー。現京都造形芸術大学芸術学部教授。著書に『歴史を「本当に」動かした戦国武将』、『幕末維新を「本当に」動かした10人』(ともに小学館101新書)など。

※SAPIO2017年6月号

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン