公的保険が整備される一方で、韓国では国民の9割近くが民間医療保険にも加入しているという。日韓の社会保障政策に詳しいニッセイ基礎研究所・准主任研究員の金明中氏が話す。
「民間保険で加入率が高いのは、公的医療保険が利かない自由診療の費用や差額ベッド代などをカバーする『実損填補型保険』です。この保険が普及している理由の1つが、韓国では患者の自己負担割合が平均35%以上と高いことです。さらに保険の利かない診療と組み合わせた混合診療も認められているため、保険適用外の診療部分を民間保険でカバーしようと考える人が多いのです」
1990年代から韓国は医療保険制度が整備され、さらに健康志向も上がったことで平均寿命を押し上げたのだろう。
気になるのは、日本が大きく順位を下げる理由である。論文の作成メンバーであるジェームズ・ベネット博士によれば、理由の1つは「食生活の変化」が挙げられるという。
「日本では以前よりも高血圧患者が増加し、BMI(肥満指数)のバランスも悪くなっています。これは食文化が変化してしまったためではないでしょうか。成人病の発症リスク上昇など、将来的な平均寿命の引き下げを生んでいると考えられています」
これに補足説明を加えるのが、桜美林大学名誉・招聘教授の柴田博氏(医学博士)である。
「私は20年前から“日本人の平均寿命はいずれ延びなくなる”と指摘してきました。その理由は『栄養不足』という至ってシンプルなものです。誤解している方も多いですが、栄養不足は寿命に直結する重大疾患です。いまや日本人のカロリー摂取量は終戦直後よりも低いのが現実です」