◆嫌いな人には嫌いと言ってもいい

 本書は7人の中学生の愛すべき個性こそが最大の推進力だ。

「13年前に同じく10代を描いた『冷たい校舎の時は止まる』でデビューした頃と比べて、一番大きな違いは私自身が大人と呼ばれる年齢になったこと。以前は親といえば大人の代名詞でしたが、実際は子供が地続きに大人になっただけなのかもしれないと今は思います。大人と子供、両方の気持ちがわかるようになったからこそ、両者に対してフェアな書き方がしたかった。

 理解しあえない人間は大人も子供も関係なくいるし、『誰とでも話せばわかる』という文脈に苦しむ子たちにも、『嫌いな人には嫌いって言ってもいいんだよ』と今なら伝えられる。10代の読者には、実は大人って昔はあなたと同じだったんだよ、と伝えたいし、大人の読者には、無関係な子供の話ではなく、かつての自分自身の話だったと思ってもらえたら嬉しい」

 フリースクールの〈喜多嶋先生〉や、こころの母親。さまざまな大人の存在を傍らに置きながら、子どもたちは成長していく。辻村氏は、現実の不登校の現場を知る大人たちに取材もしたという。

「取材の中で出会ったあるスクールカウンセラーの方に言われた言葉で印象的だったのが、『自分は風のような存在になりたい』ということ。あの先生のおかげで、と名前に感謝されるようじゃまだまだで、気づいたらいつの間にかつらい時期を乗り越えられていたと思ってもらえたら嬉しいと。

 名前のない風に背中を押された感触だけが残れば、あとは忘れてしまってもいい──その言葉を聞いて、こころたちの城での記憶もそうあってほしいし、この本も読者にそう読まれてほしいと強く思いました」

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