「私、ミステリ作家と呼ばれると凄く嬉しいんですが、作中で人が死ぬことは少ないんです。ただ、『ミステリ作家の書いた青春小説』であることは心掛けたい。そうか、物語の側がこの仕掛けを求めていたんだなって、後から腑に落ちる感覚が今回もありました」

 この春、6校分の小学校の生徒が集まる雪科(ゆきしな)五中に進んだこころは、入学早々つらい毎日を送っていた。クラスの中心人物である〈真田美織〉から陰湿なイジメを受けたのだ。美織は担任の〈伊田先生〉の受けもよく、特に女子は彼女の言いなりだった。

 そしてある日、〈決定的な“あれ”〉が起こる。大人からしてみると、たいしたことではないように思えるかもしれない出来事でも、それは、こころの生活を根本から変えてしまうような衝撃的な事件だった。どれだけ怖かったかのその描写に息が詰まる。こころは以来学校に行けなくなり、フリースクールへ行こうにも本当にお腹が痛くなった。

 毎日母親が用意した弁当を1人で食べ、夕方になるとクラスメートの〈東条萌〉がプリント類を投函する音をぼんやり聞く彼女は、家も近所で仲良くなれそうだった萌にすら、もう会いたくなかった。そんな時、部屋の姿見が突然光り、彼女はオオカミさまや6人と出会うのだ。

「例えば美織たちにされたことでこころがどんなに怖かったか、同年代の子であっても一から想像するのは難しいと思うんですね。そういう一見自分と関係なさそうな境遇に身を置けるのも小説ならではですし、表向きはうまくやれている子でも一つ間違えばフツウから外れていたかもしれないと思えるよう、この7人を造形していきました」

 まず女子はポニーテールの似合う活発な〈アキ〉と物静かな〈フウカ〉。男子は城でもゲームばかりしている〈マサムネ〉に食いしん坊の〈ウレシノ〉。一見ワル風の〈スバル〉やイケメンの〈リオン〉。17時以降、城に残ることは禁じられ、願いが叶うのは1人だけ。鍵は城に隠されたヒントを元に各自探せというが、彼らはやがて鍵探しよりも、城の存在とそこで会える仲間たちの方を大事に思うようになっていく。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン