だが、前世紀の末から行政の攻勢が強まり、エロ本自販機を規制する条例が次々と制定されていった。そして、さらに決定的な一撃がもたらされた。ネットの普及である。こうして弱体化した業界に、さらに行政が追い打ちを掛ける。エロ本自販機全撤去を宣言する自治体が相次いだのだ。その結果、今年の春現在、北海道、京都、兵庫、愛媛、沖縄などの1道1府11県では稼働中のエロ自販機は1台も確認できてない。
当初はエロ本自販機への郷愁から探訪を始めたが、次第に今も残る自販機を巡る状況にも興味を抱くようになった。だが、同じ場所を再度訪れると、消滅したり、稼働していないことが多い。なくなって初めて価値に気付くというのはよくあることだが、エロ本自販機も同じである。だからカメラに収めることにしたのだ。
この風景が少しでも長く現実のものとして存在し続けることを切に願う。
撮影■黒沢哲哉
※週刊ポスト2017年6月2日号