しかし、性器無修正の“裏本”が登場するとビニ本は一気に衰退。その陰で自販機本はしぶとく生き残り、むしろビニ本登場前より大きな市場を築いた。1980年代前半には、全国で2万5000台のエロ本自販機が稼働し、毎月450万冊が発行され、年500億円を売り上げるという第2のブームが到来したのである。
その人気は、家庭用ビデオデッキの普及とエロビデオの登場によって壊滅的な打撃を受ける。1980年代半ばのことで、街角からエロ本自販機の姿が急速に消えていった。
だが、エロは簡単には死なない。1980年代に物流の中心が鉄道からトラックに移行すると、地方の街道沿いに「オートスナック」「コインスナック」と呼ばれる無人の自販機ショップが出現し、長距離トラックドライバーのオアシスとなった。車を自分で洗うコイン洗車場も普及した。そうした場所にエロ本自販機が設置されたのだ。
自販機専用の新刊はもう制作されていなかったので、主に「ゾッキ本」と呼ぶ、出版社が在庫を捨て値で放出した本が売られた。さらに、1970年代半ばから街道沿いに出現していた有人のアダルトショップの立地を追い掛けるように、エロ本自販機も進出した。
その頃からエロ本自販機は簡易な小屋の中に置かれるようになり、1980年代後半から90年代にかけて無人のエロ本自販機小屋が日本全国に増殖していった。この第3のブームは2000年代前半まで続いた。