◆タングのモデルは4歳半の長男?
カリフォルニア、ヒューストン、東京、パラオ。飛行機やバス、車を乗り継いで二人は旅を続ける。ロボットといえば本来、ハイテクノロジーの精髄のはずなのだが、〈ハイテクと昔ながらの技術〉で作られたらしいタングを連れての旅は、あちこちに困難が待ち受けている。
「私自身、大学を卒業して就職するまでの一年間、カナダとアメリカにバックパックの旅をしたことがあるので、アメリカにはぜひ二人を連れて行きたかったですね。東京を選んだのも、自分が大好きで来たことがあったから。ロボットと旅をするならぜひとも秋葉原へ行かなければという信念(笑い)のもと、ベンやタングはここでどんな反応をするだろうと想像しながら、楽しんで書きました」
タングに出会ったときに引き出される人々の反応が、土地ごとに違っていて面白い。タングはタングで、要求が通らなければ〈地団太を踏み、金切り声を上げる〉し、タングを売らないか、という人がいれば、ベンの脚にしがみつく。愛くるしいふるまいに、ベンでなくても魅了されてしまう。
「モデルは私の長男ですかって? 興味深い質問です。というのも小説を書き始めたとき彼は生まれて数週間で、タングは想像でつくったものですが、いま4歳半の彼がタングと似たような行動をとるのを見て驚くことが結構あるんですよね」
タングには〈希望をかなえてやりたくさせる不思議な力があるらしい〉。子どもと接した経験がなく、エイミーとの間にも子どもはいらないと考えていたベンなのに、タングとは離れがたくなっていく。