国内

驚異の記憶力を持つ高齢者「スーパーエイジャー」脳の秘密

記者がバラバラに崩したルービックキューブを目を閉じて戻していく友寄さん

 6面がすべて揃ったルービックキューブを、記者が目の前でバラバラに崩す。赤、黄色、青、白、緑、橙色の各色があちこちに散らばったキューブを渡されたその男性は、目を閉じて静かに面を動かしていく。

 カチャカチャカチャ…。20秒後、すべての面がきれいに揃っていた。

「すごい…」

 思わず記者が感嘆する。

「どの面がどう移動したかすべて覚えているので、元に戻すだけなんです」

 柔和な笑顔をたたえてそう話す男性は、友寄英哲さん(ともよりひであき・84才)。円周率4万桁暗唱に成功した元ギネス記録保持者で、ルービックキューブを目隠しで揃える競技の世界最高齢記録を持つ男性である。

 試しに、面を崩す過程を見せず、すでに各色がバラバラになったキューブを渡してみても、結果は同じ。6つの面をじっと見つめた後、目を閉じてすらすらと揃えて見せた。

 6月初旬の週末の昼下がり、横浜市内の取材場所に現れた友寄さんは、ちょっとおしゃれな、ごく普通の高齢男性にしか見えなかった。ベージュのスーツにポロシャツ、パナマ帽姿。

「ポロシャツは家内が選んでくれました。取材だからちゃんとした格好で行きなさいって(笑い)」

 そう話す友寄さんは、背筋がピンと伸び、歩く速さも若人と変わらない。取材会場に選んだのは、駅前のカラオケ店の一室。

「歌うのは好きですが、今日は静かに話しましょうか」

 冗談を交えて気さくに話す友寄さんは、30分後、われわれ取材班に「人間の可能性」をまざまざと見せつけた。

 昨今、脳科学の分野で「スーパーエイジャー」と称される人間の研究が進んでいる。

 80才を過ぎても50~65才と同じ程度の記憶力を持つ人のことで、例えば短時間で15個の単語を覚えるテストをすると、一般的な80代が5つしか記憶できないところを、彼らは9つ以上記憶する。

 驚異の能力のカギを握るのは脳の特異性である。もともとスーパーエイジャーは一般の高齢者より記憶を貯蔵する大脳皮質が分厚いことが知られていた。さらに今年4月に米国で発表された研究結果によれば、彼らは脳の萎縮率が一般の高齢者の半分以下であることがわかった。

 脳科学の第一人者で『記憶力の脳科学』(大和書房)の著書がある、自然科学研究機構生理学研究所教授の柿木隆介さんが語る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された愛子さま(2025年5月8日、撮影/JMPA)
《初の万博ご視察》愛子さま、親しみやすさとフォーマルをミックスしたホワイトコーデ
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン