このため、それらの企業を“人馬一体”で海外に持っていくと同時に軍事的・戦略的要地を獲得して勢力範囲を拡大しようとしているのだ。つまり「一帯一路」構想は自国の企業救済と影響力拡大のための新・植民地政策、というのが本質なのである。それは今に始まったことではなく、2015年末に発足したAIIBも同様だ。
では、これから習近平主席はチンギス・ハンほどの権勢を振るうのか?
実際には過去の中国の海外インフラ・プロジェクトでやりきったものはほとんどない。アメリカのラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道計画ではアメリカのエクスプレスウエスト社が中国鉄道総公司との合弁を解消したし、中国が受注したベネズエラ、メキシコ、インドネシアの高速鉄道計画も軒並み頓挫している。
中国国内の高速鉄道用地は、共産党が人民に貸している土地を取り上げればよいだけなので建設が簡単だ。しかし、海外ではそうはいかない。民間から用地を買収しなければならないので時間がかかるし、そのためにコストも嵩むから黒字化するのは至難の業である。
もともと海外インフラ・プロジェクトはリスクが高く、過去に日本企業が手がけたプロジェクトも、大半が赤字になっている。経験もノウハウもない中国が成功する可能性は非常に低いだろう。