だが、この構想は習主席があたかも現代のアレキサンダー大王かチンギス・ハンを目指すようなものであり、遅れてきた中国版“新帝国主義”にほかならない。
実際、すでに中国は海外の港湾施設などを次々に買収している。たとえば、ギリシャ最大の港でアジア・中東地域から欧州への玄関口にあたる地中海の海運の要衝・ピレウス港は、中国の国営企業で海運最大手の中国遠洋運輸集団(コスコ・グループ)が買収した。
あるいは、パキスタン南西部のグワダル港は、中国が2015年から43年間租借することになり、「中国・パキスタン経済回廊」の重要拠点として中国に陸路でつながる道路や鉄道、電力設備、石油パイプラインなどを整備している。同港は、中国にとってインド洋とアラビア海への“玄関”であり、「一帯一路」構想における一帯(陸)と一路(海)の合流・結節点となる。
また、モルディブでは首都マーレの島と国際空港がある隣の島を結ぶ橋を中国が無償で建設。他の島でも空港や港湾などを無償で造っている。ただし、中国の航空機や艦船が必要な時には使えるという条件付きだ。つまり、ピレウス港やグワダル港、モルディブは中国の“今様植民地”なのだ。
かつて西欧列強は、資源や安価な労働力、市場、軍事的・戦略的要地の獲得などを目的にアフリカやアジアを植民地にしていった。一方、今の中国は、国内の高速道路や高速鉄道、空港、港湾、大都市インフラなどの建設があらかた終わり、鉄鋼・機械メーカーや鉄道車両メーカー、セメント会社、建設会社、デベロッパーなどの“巨大マシン”が破綻しかかっている。