2015年、国が掲げた新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)でも、認知症の人たちを地域で支えていこうという方針で、老人ホームやグループホーム、小規模多機能型などの介護施設、デイサービス、デイケアなどの介護サービスが急ピッチで整備されている。
「それでもまだまだ、施設や介護サービスを利用することに抵抗感のある人は多いですね。認知症は症状の出方にかなりの個人差があるので、家族によるケアがいちばんと、思われがちの面もあるでしょう。
でも先述のとおり、子世代がいちばんに考えるべきは、自分の人生、仕事、子育て。親の介護は介護のプロや施設とシェアすべきです。認知症の場合は、プロの介護スタッフの方が効率よくできることがたくさんあります。
そのかわり家族にしかできないこともあります。それは、長い歴史に培われた“親子の関係”です。けんかばかりでもいい。“お母ちゃん、下の世話はできないよ”というならそれでいい。決して“うそのない”親子の関係を大切に維持することです。介護は、その人のできなくなったことをサポートすることですが、大事なのは、自分(子世代)がサポートすることではなく、本人(親)にサポートが行き届くことだと、忘れないでほしいのです。
認知症介護のゴールは看取りです。“正しい介護”を模索するのではなく、最期のときまでの限られた時間をいかに楽しくゆったりと、過ごさせてあげられるか、そんなふうに考えてみてください」
※女性セブン2017年7月27日号