──30年以上前に書かれたこの本と、千葉さんの本との間に意外な共通点もあるのでは? たとえば本書は知識を捨てることで思考を活性化させることの大切さを語り、千葉さんの本では「勉強の有限化」の必要性を言っています。
千葉:ネットのある今の時代はただでさえ情報過剰になりがちで、立ち止まり、何かに焦点を絞り、じっくりと考えることが難しい。そのためなおさら意識的に、範囲を区切って考えることが必要なのです。
他にも、外山さんはセレンディピティ(何かを探しているとき、思いがけず他のものを発見すること)の大切さを言っていますが、僕の本でも似たようなことを書いています。三日坊主的に複数の関心分野を行ったり来たり横断的に勉強するうちに、違う分野の知識がシナジーを起こし、自分なりの教養が形成される、というのがそれですね。そのためのEvernote(メモを作成し、管理するアプリ)などの使い方も紹介しています。
──その方法論が本書にはないモダンなところですね。
千葉:いや、外山さんが披露している手帖とノートの使い方を見ると、本質的には今の時代のやり方と変わりません。外山さんは常に手帖を持ち歩き、何かを思いついたら、すぐにその場で書き留め、番号と日付を入れておくと言っていますが、それはメモ代わりの「ひとりツイッター」でしょう。そして、その中から脈のありそうなものは後日、別のノートに書き写し、さらにその中で発展しそうなものを別のノートに移して詳しく書いていく。
今はアプリを使ってクラウド上でやっているようなことを、外山さんはアナログ的にやっていたわけです。外山さんの本の前に出版され、ベストセラーになった梅棹忠夫さんの『知的生産の技術』(岩波新書、1969年刊)でもカードの使い方やスクラップの方法が提唱されていますが、それなども同じです。
外山さんや梅棹さんの本を現代的に解釈して読むと面白いし、今の時代に役立つ発見が多いのです。