──ベストセラーになっている“知的な武装術”の本はこれまでに何冊もありますが、千葉さんが今回の本を書いた理由は何ですか。
千葉:自分は今まで理論的なことを書いてきたので、今度はいかに生きるかの実践哲学を書こうと思っていました。特に今の日本は同調圧力が強いので、それに巻き込まれず、いかに創造的に生きるか。その方法を提示したかったんですね。一般の自己啓発本は世の中に適応するためのノウハウを提供しますが、僕の本は世の中に反抗しよう、周りのノリに合わせないようにしようと提唱する「不良の哲学」です。
──今、歴史本もブームですね。
千葉:本来、歴史記述では、仮説形成と検証を続けなければなりません。しかし、今一般の人が歴史本を求めるのは、単に本当はどうだったのかを知りたいということでしょう。それは、世の中が不安で、日本や世界はこうなっているんだと、わかったつもりになって安心したい欲求が強いからではないでしょうか。だとしたら、いかがなものかと思いますよ。
自分はなぜ、今、ここにいるのか。これは人間が抱える根本的不安で、どこまでいっても解決しません。その解決不能状態に耐えて、仮説を吟味し続けることが大事なのですが、今の日本人はそうした知性の強靱さを欠いているような気がしますね。
【PROFILE】ちば・まさや/1978年栃木県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。本文紹介以外の著書に『動きすぎてはいけない──ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』、『別のしかたで──ツイッター哲学』(ともに河出書房新社)。
※SAPIO2017年8月号