2006年から今年6月まで靖国神社に勤め、禰宜という幹部職にあった宮澤佳廣氏
宮澤氏が靖国神社に奉仕した直後の2006年7月、日経新聞がスクープした「富田メモ」によって、問題は大きくクローズアップされた。富田朝彦・元宮内庁長官が残したとされる、
「昭和天皇は靖国神社へのA級戦犯合祀に不快感を示していた」という内容のメモだ。宮澤氏はすぐ「これは本物だ」と確信したという。
「富田メモは発見の当初、『偽文書ではないか』という声が神社界の内部からも上がっていました。しかし私は昭和天皇が昭和61年に詠まれた『この年のこの日にもまた靖国の みやしろのことに うれひはふかし』という御製(和歌)にずっと注目していて、戦犯合祀と無関係と解釈するのは難しいと感じていたのです。ついにそれを裏付ける文書が出てきたのかと思いました。
しかしすでに、A級戦犯は合祀されているのだから、これは変えられない。だとすれば今からでもその合祀について、国民的合意を形成するような動きを靖国神社としてとらねばならない。そうしないとこの富田メモは、反靖国勢力に利用されてしまうだろう。そんな風に思い、私の意見をまとめて提出したのですが、日の目を見ることはありませんでした」
◆自衛隊員を祀れるのか
宮澤氏は今後、同じようなことが起きることを危惧している。実は今、亀井静香・衆議院議員らを中心に、戊辰戦争の白虎隊や西南戦争の西郷隆盛ら“賊軍”を靖国神社に合祀すべきであるという運動が起きている。