火葬場は、親戚の葬儀で何度か行ったことがあるが、身内の葬儀で行くのは初めてだ。 仲が悪かった老夫が亡くなりカラカラ笑っていた妻が、いざお棺が炉の中に吸い込まれたら、「わぁ~ッ」と泣き崩れたり、「パパぁ~」と絶叫した娘も見たことがある。

 この世の終わり。これでオシマイ。肉体が消えてなくなると思うと、何かがこみ上げてきて、弟の頭をなでたら、意外にも柔らかな髪の感触にたじろいだ。子供の頃はともかく、生前の弟に触ったことはない。

 だけど感情が揺れたのは、ここまで。焼きあがった骨に、「あちゃ~っ」とは言わなかったけど、理科室の人骨模型の出来損ないのような骨を見せられたら、心のモードがガラッと変わった。

 死の知らせからずっと続いていた重苦しい気持ちがウソのように消えて、バツが悪いというか、シラケるというか。正直いって骨は骨。この無個性な物体に、とてもじゃないけど、喜怒哀楽をこめる気にはなれない。

「足の骨がここまでしっかり残っているのは珍しいよ」
「のど仏もちゃんとあるし」

 太い骨を残して、あの世に逝かなくてもいいのに。そう思うと、バスの横に座った1つ年上の赤ら顔の従兄の肥満が気にかかる。

「血圧、高くねぇの?」
「高いよ」
「定期健診は?」
「そのうちな」

 大工の弟に続くバカ発見! 従兄の弟はさらにその進化系で、「検査なんかしたって、死ぬ時間は死ぬんだが。おれは絶対にしねぇかんな」とムキになって開き直ってる。

 こういう男を病院に連れていく方法などないと即断した後で、もしあの時、弟を検査させられていたら…と、どうしようもないことを思ってみたりした。

※女性セブン2017年8月10日号

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