公務員としてフルタイムで働きながら仕事と競技(マラソン)の両立を貫く川内にとっては、レースも練習の一環。フルマラソン以外にも毎週のように市民マラソンに参加している。
「レースだとモチベーションも上がりますし、練習とはまた質の違ったトレーニングができるんです。でも、決してやみくもにレースに出ているわけではなく、狙ったレースから逆算して、その時期のトレーニングにあったレースに出るなど、しっかりプランを立てているんです」
ゴールドコースト・マラソンの2日前、川内はスポンサー主催の夕食パーティーに招待されていた。その席で川内がすでに2017年だけで18ものレースに参加していることが紹介されると、場内では拍手が沸き起こった。いまや川内の常識破りの走りは、世界のマラソン関係者を驚かせているのである。
●かわうち・ゆうき/1987年3月5日、東京都生まれ。埼玉県久喜市立鷲宮中、県立春日部東高を経て学習院大学へ。大学卒業後は2009年に埼玉県庁に入庁し、2014年4月より久喜高校(定時制)の事務職に。フルマラソン70戦で優勝25回。2013年3月のソウル国際マラソンで自己ベストの2時間8分14秒をマーク。五輪出場は2大会連続で逃したが、世界陸上は2011年と2013年に続き、ロンドン大会が2大会ぶり3度目の出場となる。175センチ、62キロ。
■取材・文/栗原正夫 ■撮影/岸本勉
※週刊ポスト2017年8月11日号