国内

誤嚥性肺炎の回避、しっかり噛んで唾液を出すことが重要

誤嚥性肺炎の原因は“細菌”だった(写真/アフロ)

 おいしいものを食べて味わうことは、年齢性別を問わず、人として生きる喜びであるが、高齢者にとっては命に直結する、重要な作業でもある。診療所のかたわら、高齢者の「口から食べる」を支えるべく奔走する訪問歯科医、「ふれあい歯科ごとう」代表の五島朋幸さんに聞いた。

「口腔の問題は、高齢者全般に起こること。筋力が衰えて運動量が減り、食欲や食べる量が減ります。食べないと栄養状態は悪くなり、口の中では殺菌作用のある唾液の量が減ることで、細菌が増えます。

 この細菌こそ、高齢者の死因として恐れられる誤嚥性肺炎の原因。よく、食べたものを誤嚥して肺炎になると思われがちですが、それは間違い。胃ろうで、経口飲食しない人でも誤嚥性肺炎は絶えません。

 高齢者にとって大切な口腔ケアは、まずしっかり噛んで唾液を出すことなのです」(五島さん・以下「」内同)

 口内細菌は心筋梗塞や糖尿病などの一因ともいわれる。五島さんによると嚥下機能は40~50代から衰え、驚くことに私たちも毎日のように誤嚥している。すぐに肺炎などにならないのは、栄養状態がよく体力があるからだという。

「栄養を摂るためにも正しい噛み合わせで噛むことが必要。つまり上と下の歯がきちんと噛み合い食べ物を砕くこと。噛むことで唾液が出てかみ砕いた食べ物と混ざり、消化が始まる。きちんと消化しなければ栄養分も吸収できません。虫歯や歯周病で痛んだり、歯が抜けたりすれば噛み合わせの働きは半減しますから、治療や入れ歯が大切なのです」

 五島さんの訪問診療先では、入れ歯の調整でうまく食べられるようになったことで意識がしっかりしたり、逆に食べられなくなると目を開けることさえしなくなったりと、食べることの脳への影響が垣間見られる例が多数あるという。

「脳機能のほとんどはあごや歯、舌などの動きと直結しています。食べることで生をつないでいるので、動物としては当然のこと。栄養を摂るだけならいろいろな方法がありますが、口に入れる、噛む、味わう、のみ込むという一連の動きには、さまざまな働き、そして喜びもあります。一日でも長く“口から食べる”を維持すべく、治療しています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン