──噺家は声が出る限り、高座に上がり続ける。大変なご商売ですね。
「歳とともに芸は円熟味を増していくとか、渋味が出てくると言われますけど、僕は劣化していくと思いますね。声の力とか、勢いとか。若いときよりも稽古しないと、うまくいかない」
──それでも今も、ほとんど休みがないとうかがいました。
「吉本興業に育ててもらったせいか、忙しくしてるときの方が充実感がある。暇になったらどうしょうかみたいなところがありますけども」
昨年12月、師匠の桂小文枝の弟子となってから50年を迎えた。それを記念して7月13日、富士山に登頂し、頂上で奉納落語を行った。
その約2週間前、今回のインタビュー時には、こう話していた。
「50周年という節目に、富士山の上で、落語やろうかなと考えています。それで昨日、富士山へ1900何回登ったという人から、レクチャーを受けたんです」
あまりの荒唐無稽な計画に、半ば、ジョークかとも思っていたのだが、本気だったのだ。