芸への探求心は、まったく衰えていない。
「この世界は、完成というものがありませんからね」
文枝は「ピン芸人」の日本一を決める「R-1ぐらんぷり」の審査員を2009年から務めている(2016年を除く)。そして「落語家も出るべきだ」と、常に言い続けている。
──勝てると思いますか?
「僕は落語家なら、(R-1の持ち時間である)2分でも3分でも笑わせる力はあると思いますね。時間は関係ない。実力のある人が出てきたら、戦えると思いますけれども。ただ今は、冒険しなくてもやっていけるみたいな甘えがあると思いますね。そこは僕としては、がんばってもらいたいなという気持ちです」
46年続く『新婚さんいらっしゃい!』(朝日放送)をはじめとして、若い頃から積極的にテレビやラジオに出演し、また、創作落語で新境地を拓いてきた文枝だからこそ、言える言葉だ。
落語で演じられる演目は、大別すると「古典」と「新作」がある。古典は江戸時代から大正時代にかけてつくられたものを指し、それ以降のものを新作と呼ぶ。関西では、後者をあえて「創作」と称することの方が多い。