「プレーヤーが増えることは我々にとっても歓迎すべきこと」(西川社長)
と、日産サイドは先行者としての余裕を見せるが、事はそう簡単ではない。スキラッチ副社長が名指ししたテスラは市販車を出してからたかだか10年程度の新興メーカーだが、アメリカでのユーザーの支持は鉄板とも言えるほど強固だ。技術的に良いEVを作ることと、顧客が喜んで買う商品作りは別の問題なのだ。
筆者は2度ほど旧型リーフで1000km超のロングドライブを試してみたことがあるが、バッテリー性能の問題を除けば、クルマとしては非常に良くできていた。重心が低く、サスペンションを固くせずとも走行性能はきわめて高い。
また、電気モーターにどうパワーを発生させれば乗る人に違和感を与えないかという作りこみも素晴らしいレベルにある。新型はそれよりはるかにハイパワーで高効率というのだから、競争力はさらに増しているはずだ。
だが、大衆車メーカーから高級車メーカーまで、多くのプレーヤーがEVに参入してきたとき、大衆車然としたリーフだけで防衛を果たすのは難しいだろう。いくら先進的なものを作ったとしても、モノクラスで押し通せるのは黎明期だけだ。
その意味では、新型リーフで「今までの3倍は行けると思う」(国内営業担当・星野朝子専務執行役員)という目標の達成はマスト。そのうえで日産はリーフ以外の乗用モデル、それも技術力、商品力の両面でトップランナー級のものを、できればEV専用モデルという形で増やし、存在感を高めていかなければならない。そうでなければライバルに埋没するだけだ。
日産もその点については重々承知だろう。そう見ると、今回の派手やかきわまりない新型リーフの発表会は、退路を断った日産の緊迫感、悲壮な決意の表れともいえる。この先、日産がEVの世界において真の盟主となれるかどうか、行方が楽しみである。
■文/井元康一郎(自動車ジャーナリスト)※写真提供も