安倍首相が政権を奪回した前々回の2012年総選挙も、大勝した前回の2014年総選挙も、自民党の小選挙区における総得票数でみると、民主党に惨敗して119議席しか取れなかった2009年総選挙の約2730万票からむしろ減っている。投票率が下がったために、コアな自民党支持層の票だけで勝ってきた。
それでも、安倍首相の支持率は50%を超え、民主党政権に失望していた国民には「一強」と呼ばれた首相のリーダーシップに期待があったことは間違いない。
しかし、次の総選挙後に出現するのは、「勝てる」「勝てる」とおだてられて解散総選挙を打たされた安倍首相が、加計疑惑も森友疑惑でも「真摯な説明」や反省を何もしないまま、あれよあれよと圧勝してしまった政権だ。それはこの国に「国民の支持なき巨大与党」という、民主主義の前提を崩壊させる政治形態の誕生を意味する。その時、ニッポン政治は最大の危機を迎えることになる。
※週刊ポスト2017年9月29日号