ライフ

「開明派」の福沢諭吉はなぜ「反乱者」西郷隆盛を擁護した?

福澤は西郷の死を惜しんだ 近現代PL/AFLO

 啓蒙思想家・福澤諭吉はその著書『明治十年丁丑(ていちゅう)公論』で、西南戦争を起こした西郷隆盛を、言葉を尽くして擁護している。開明派として知られる福澤が、反乱軍を率いた西郷を庇ったのはなぜか。明治大学教授の齋藤孝氏が解説する。

 * * *
〈西郷の死は憐れむべし、之を死地に陥れたるものは政府なり〉

 これは『丁丑公論』の一節です。この前段で福澤は、「明治政府が西郷率いる士族の暴発を未発に留めることができなかっただけでなく、かえって暴発を促したのではないか」と指摘し、「政府は、西郷の死を防ぐための手立てをもっと積極的にすべきだった」と、西郷の死を憐れんでいます。加えて福澤は、「政府が西郷を殺したんだ」と繰り返し訴えます。

〈政府は啻(ただ)に彼れを死地に陥れたるのみに非ず、又従て之を殺したる者と云うべし。西郷は天下の人物なり。日本狭しと雖(いえど)も、国法厳なりと雖も、豈(あに)一人を容るゝに余地なからんや。日本は一日の日本に非ず、国法は万代の国法に非ず、他日この人物を用るの時あるべきなり〉

 西郷を「天下の人物」と呼び、「いくら日本の領土が狭く国法(国の法律や掟)が厳しいと言っても、どうして西郷一人を日本に置いておく余裕がなかろうか」と、西郷を死に追いやった明治政府の狭量さを嘆いています。西郷とは互いに面識はなかったものの、この一節を〈是亦(これまた)惜むべし〉と結び、さらに感情を込めている。これは福澤の他の著作と比べると非常に珍しいことです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
JALの元社長・伊藤淳二氏が逝去していた
『沈まぬ太陽』モデルの伊藤淳二JAL元会長・鐘紡元会長が逝去していた
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン