妖艶で色っぽい女形の踊りに客席は息を呑む


 芝居は人情劇。そう決めたのは、2011年3.11の震災後、ふるさと福島を訪れたとき、ある少女に心動かされたからだ。津波で両親を亡くして天涯孤独になった中学生の女の子が、ひとり生き残って「もう死にたい」と泣く老女を励ましていた。梅沢はその姿を目の当たりにして、しみじみ思ったのだ。

「ああ。これが日本人の人情だ。気障な芝居はもうやめだ、これからは人情芝居をやっていこう」

 親きょうだい、嫁姑、身近な人間関係の中で繰り広げられる、どこにでもあるような小さな話。笑って、ちょっとほろりとする、そんな芝居だ。客は皆、上気した面持ちで劇場を出ていく。

「とにかく、ハッピーな気持ちになって帰ってもらいたいの」と言う梅沢は、人々を楽しませる生まれながらの「エンターテイナー」だ。

 1歳と5か月で、両親が率いる劇団の舞台に上がり、連日客の喝采を浴び、「天才子役現わる」と騒がれた。が、小学校入学時に親元から、福島の祖母宅へ。そこで底知れぬ貧乏に泣いた。

◆「人情だよ!」と言うようになった原体験

 学用品もろくろく持てない、給食費が払えなくて食べられない、そんな自分が恥ずかしくて学校をズル休みするようになった。年長の不良少年に誘われて、工場に盗みに入ったこともある。あえなく御用となり、工員たちに警察に突き出されそうになった。

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