国内

「綱吉バカ殿説」は本当にそうか? 井沢元彦氏考察

「綱吉=バカ説」を井沢元彦氏が検証

「歴史に学べ」という言葉がある。現代の世の中を捉える時、よく使われる言葉だが、過去の歴史をさらに古い過去と比較し、学ぶこともできる。作家・井沢元彦氏による週刊ポストの連載「逆説の日本史」より、徳川第五代将軍・綱吉の「バカ殿説」についての考察をお届けする。

 * * *
 近現代史に入ったところで、四半世紀前に私が指摘し『逆説の日本史』を起筆するきっかけともなった日本歴史学界の「三大欠陥」について改めて説明している。その第一が「滑稽なまでの史料絶対主義」であることは前回(の当連載で)ご説明した。

「犬公方(いぬくぼう)徳川綱吉」がいかに優れた、それも政策立案能力、実行力、高邁な理想と三拍子そろった名君であったかを証明し、その名君を「犬バカ」としてしかとらえられない日本歴史学界の問題点を指摘しておいたが、もう少し補足しておこう。

 日本を代表する学者のひとりである新井白石が綱吉のことを「暗君」すなわちバカ殿と批判している。これは事実である。このことも日本歴史学界の「綱吉バカ殿説」を補強する形になっている。すなわち「白石ほどの学者が綱吉を暗君と言っているのだから、やはりバカ殿だ」ということだ。確かに新井白石が大学者であることは否定しない。

 しかし、いくら大学者とはいえ、一個の人間でありまた江戸時代の人間でもある。当然その「学識」にも現代の目から見ればさまざまな欠陥があるし、また前回指摘しておいた「常識」の問題もある。

 この場合の常識とは「新政権の担当者は前代の政権の悪口を言うものだ」という、「学識」以前の人間世界の決まりごとのことである。それは昨今のアメリカのトランプ大統領のオバマ前大統領への批判にも現われているが、よく考えれば中学生でもわかることで、新政権の存在意義を強調するための一番よい方法はこれだからである。討幕の志士たちも「幕府は悪だ」と言ったではないか。逆に褒めてしまえば、「そんなよい幕府を倒す必要があるの?」ということになってしまう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン