「広告業界でも、労働環境の問題が指摘されるなど、社会的に働き方改革が課題となっています。もし今、『24時間戦えますか』というコピーが世に出てきたら、批判の対象になるのは間違いない。『私はコレで会社をやめました』だって、不倫を容認しているのかとなるでしょうし、『男は黙ってサッポロビール』も性差別だといわれかねません。昔からどんなコピーにも嫌いという人はいたと思いますが、最近は嫌いと思った瞬間にネットでつぶやいて、その声が可視化されてしまう。広告もその声に向き合わざるを得なくなっている窮屈さはありますね」(谷口編集長)
だが、少なくはなったとはいえ、ライザップの「結果にコミットする。」のような誰もが知っている名コピーも生まれているのも事実である。
逆風のなかで誕生したコピーは、これまで紹介してきたコピー以上の名コピーとなる可能性も高い。そんな話を当のコピーライターたちに向けると、思いがけない答えが返ってきた。
「ゴッホは亡くなった100年後に評価があがりましたが、商品広告が100年後に注目されてもまったく意味がない。コピーは時代を映す鏡でなければならないですから。それくらい潔いからコピーは魅力的なんだと思います」(尾形さん)
「仲畑さんのコピーは普遍的だねって言われても褒め言葉じゃないの。コピーはその時期に使われまくって疲弊して、まったく価値をなくすくらいの方がカッコいいと思うね」(仲畑さん)
時代、時代で一瞬の輝きを放ち、役目を終えれば儚はかなくも消えていく。そんな刹那的なコピーだからこそ、言葉に社会を動かすような大きな力が宿るのだろう。
そして彼らの意に反して、その名コピーは時代を超えても人を惹きつけることも、また真実である。
※女性セブン2017年10月12日号