と言うことは。すぐ先、「南洲翁終焉之地」の碑がある地点で顔を上げると、やっぱりそうだ。高架の上にちらりと桜島がのぞいているではないか。
後年山を切り崩したのでなければ、西郷が「ここでよかろ」と告げた「ここ」からも故郷の山が見えたはずだ。
東を向いて座したのは宮城遥拝のためと思っていたが、その方角には彼が子供の頃から見て育った雄渾な火山があった。最後の瞬間に目に焼きつけて瞼をとじると、故郷と日本が大らかに重なる。
救われる想いだった。
【PROFILE】ノンフィクション作家。1982年大阪生まれの埼玉育ち。東京大学教養学部(理科I類)中退。人形劇団等を経て、立教大学異文化コミュニケーション学科卒。著書に『韓国「反日街道」をゆく 自転車紀行1500キロ』。
※SAPIO2017年10月号