ライフ

熊本城、田原坂、城山 西南戦争激戦地をママチャリで往く

田原坂。左は筆者が使用したママチャリ

 1877年2月、60年振りといわれる大雪のなか、西郷隆盛率いる薩摩軍が蜂起した。熊本、宮崎で激戦を繰り広げた後、鹿児島で自刃するまでの半年余りの内戦は、140年経た現在も人々に語り継がれている。ノンフィクションライター・前川仁之氏が、西南戦争の戦跡をママチャリで辿った。

 * * *
 明治10年2月に鹿児島を発った西郷率いる薩摩軍約1万6000は、同22日、鎮台兵(明治の臨時軍政機関)が立て籠もる熊本城に総攻撃を開始した。だが加藤清正が築いた堅牢な城郭を攻略できず、鎮台兵は52日間の籠城の末、援軍との合流を果たした。その間、熊本城救援に向かう政府軍と北上を試みる薩軍主力との間で幾多の戦いが繰り広げられる。

 中でも最大の激戦地となったのが、熊本城から北西におよそ15kmの田原坂だ。

 私が熊本に到着した翌日は、朝から雨が降ったり止んだりで定まらない天気だった。「雨は降る降る人馬は濡れる」と歌われた田原坂を目指すにはちょうどいい。西南戦争の時代、陸戦の主役は人馬だ。エンジンはなくてよい。私は熊本市国際交流会館でママチャリをレンタルした。1日300円。

 籠城戦の指揮を執った谷干城の像がある熊本城正面から北上を開始。途中雨が本降りになり、レインコートを着る。しかしひどく蒸し暑いので、どうせ内側から汗で濡れるのだ。

 道中、官軍墓地2箇所と薩軍墓地1箇所で手を合わせた。官軍の方は墓石の四面に階級と氏名、所属、出身地、没年月日と場所が記され、死後もなお整然と隊列を組んでいる。一方、七本柿木台場薩軍墓地には個々の墓石がなく、大きな墓碑にまとめられていた。薩軍の側に立って戦死した「熊本縣士」8名の名が刻まれ、「外三百三名戦死之墓」とあるだけだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
《司忍組長の「山口組200年構想」》竹内新若頭による「急速な組織の若返り」と神戸山口組では「自宅差し押さえ」の“踏み絵”【終結宣言の余波】
NEWSポストセブン
1985年、初の日本一は思い出深いと石坂浩二さんは振り返る(写真/共同通信社)
《阪神ファン歴70数年》石坂浩二が語る“猛虎愛”生粋の東京人が虎党になったきっかけ「一番の魅力は“粋”を感じさせてくれるところなんです」
週刊ポスト
第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
コムズ被告主催のパーティーにはジャスティン・ビーバーも参加していた(Getty Images)
《米セレブの性パーティー“フリーク・オフ”に新展開》“シャスティン・ビーバー被害者説”を関係者が否定、〈まるで40代〉に激変も口を閉ざしていたワケ【ディディ事件】
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン