何本ものマイクを握った山尾氏は、「個人の力の結集と安倍内閣との戦い」と語気を強めると、あごに力を入れて上げ、頭をぐっと後ろに瞬間的に引いた。あごに力を入れるのは無意識に表れる防衛の仕草だ。この選挙区を今回も死守したいという気持ちが強いのだろう。わずかにあごを上げたのは、選挙の勝敗に少なからず自信があるため。だが同時に頭を後ろに引いたところを見ると、「風当たりは思ったより優しい」と言いながらも、厳しさも肌で感じていたのかもしれない。
この1か月「思いもよらない出来事が起きた」と、支援者を前にして「今日の初日の光景が嬉しい」と何度も頷いた山尾氏。空を見上げると「自分なりに晴れ渡った澄み切った気持ち」と言ったのだが、かすかに首を横に振ったように見える。心のどこかにくすぶっている後悔のかけらと、自分を正当化したいという意識が葛藤しているようにも思える。
さて、他のお騒がせ議員たちはというと…
「このハゲー!」というインパクトのある暴言で、公設秘書へのパワハラを報じられた豊田真由子氏は白のジャケットに白のインナー、白のパンツにピンクのたすき。マイクを握ったこの日は、顔をくしゃくしゃにして感きわまった表情を見せながらも、深く頭を下げていた。
7月に子供の保育園の送迎に公用車の私的使用疑惑を報じられた自民党の金子恵美氏も、出陣式には白のジャケットに白のインナー、白のパンツを着て、赤いたすきをかけていた。金子氏は、昨年、育休宣言をした夫が自身の妊娠中に不倫をしていたことが発覚、議員辞職した宮崎謙介氏の妻といったほうがわかりやすいだろう。
そして自衛隊の日報隠ぺい問題、都議選応援時の失言などで防衛相を辞任した自民党の稲田朋美氏も、出陣式には白のシャツブラウスに白のたすき。
終わりよければ…といかなかった彼女たちは、みんな白を着ていたのだ。
清廉潔白、明るい未来や平和をアピールするため、選挙では白を選んで着る候補者も多い。選挙活動中は白で通すという候補者もいれば、蓮舫議員のように、白がシンボルカラーの政治家もいる。だけど、世間を騒がせた女性議員が揃いも揃って出陣式に白を着ていたとなると、やっぱり思った以上に世間の風は厳しいのだろう。なんとか白でリセット…と思っても無理はない。
自らの心にある葛藤、後悔、罪悪感なども白を着ることで和らげ、拭い去り、気持ちを切り替え、これまでの過去を一新して前に進もうとする時、そんな気持ちを目に見える形でアピールできる色は、やはり白をおいて他にない。白を選んだ彼女たちに、さて、どんな結果が待っているのだろうか?