ゆがみの外見も重要だ。すっきりしたスーツにネクタイ姿の羽生と対照的にゆがみはだぶだぶの上下によれた黒シャツ、髪もぼさぼさ、無精ひげ。すっきり男の羽生が、正義感はあるものの実は出世欲いっぱいの嫌な男というのもミソだ。
ゆがみの服装は原作マンガに近いが、ドラマではそれ以上にだぶだぶにしている。これは数々のメンズファッション雑誌の表紙を飾ってきた浅野が、うっかりカッコよく見えたりしないためのだぶだぶ。緻密に計算されただぶだぶは、ゆがみのはみだしぶりの象徴なのだ。
この「はみだし」こそが、映画寄り俳優たちのドラマでの成功のキーワード。思い出してみれば、加瀬亮は『SPEC』シリーズで次々現れる異能の者たちと戦い、最後は地球の最後かと思うような大事件に巻き込まれた。三上博史は『実験刑事トトリ』で元生物学研究者という刑事になり、シリーズ化された。渡部篤郎も『警視庁いきもの係』でペンギンやヘビに振り回される刑事をゆるく演じたところだった。ドラマからはみだすほどの存在感があるのだから、“はみだし刑事”が、ぴったりくるのは当然なのである。ゆがみが浅野忠信の十八番になるのは、これで決定!
浅野は9月には、ゲームCMでピカチュウの耳型カチューシャをつけて登場。ゲームに敗けて、芦田愛菜にペンでほっぺにぐるぐると赤丸を描かれていたが、なんだかうれしそうであった。中途半端に小さくまとまる役より、ピカチュウやはみだし男のほうがよっぽどおさまりがいい。今後もそんな方針で誰にもマネのできない仕事をしてほしいものだ。