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視覚障害者の切なる思い、駅のホームドア設置が進まぬ理由

2017.10.29 16:00

 線路上にうずくまる男性に運転手が気づいたのは、100m手前の時点だった。キキーッ! 響きわたるけた

 線路上にうずくまる男性に運転手が気づいたのは、100m手前の時点だった。キキーッ! 響きわたるけたたましい列車の急ブレーキ音。騒然となる駅構内。下りホームには、男性の持っていた白い杖が転がっていた。

 10月1日夜9時すぎ、大阪府高石市のJR富木(とのき)駅で、椋橋(くらはし)一芳さん(59才)が天王寺発和歌山行きの快速電車にはねられ、全身を強く打って死亡した。直前には白杖をつき、ふらつきながら歩く椋橋さんの姿が、ホームで目撃されている。

 椋橋さんは、全盲の視覚障害者だった。富木駅には点字ブロックこそあるものの、転落防止用の柵はなく、転落当時、ホームに駅員は1人もいなかった。目の見えない彼を救う「セーフティーネット」が、この駅には欠落していた。

 悲しい事故が一向になくならない。国土交通省によれば、視覚障害者が駅のホームから転落する事故は2010年以降年間およそ60~90件で推移している。2016年に起きた転落事故は69件で前年度の94件から減少したが、前年にゼロだった死亡者数は3人になった。

 視覚障害者にとって、駅のホームは極めて危険な場所である。日本盲人会連合が視覚障害者252人に行ったアンケート(2011年)によれば、駅のホームから「転落しそうになった」と答えた人は約60%に上り、実際に転落経験がある人は36.5%もいた。

 転落した視覚障害者が間一髪、救出された例もある。今年8月、京都市営地下鉄烏丸線北大路駅のホームから視覚障害者の男性が転落。その直後、近くにいた会社員の男性(29才)がとっさの判断で線路に飛び降り、ホーム上の客らと協力して転落した男性を救出した。

 今も人々の記憶に残るのは、2001年1月、JR新大久保駅のホームから転落した男性を助けようとして死亡した韓国人留学生の李・秀賢さん(享年26)と日本人カメラマンの男性(享年47)の一件だろう。自らの危険を顧みず、命を救助しようとした2人の勇気は日本社会に大きな衝撃を与え、その行動は大々的に称賛された。

 だが、これらは美談として語られるばかりで、転落問題の根本的な解決策は置き去りにされたままだ。

◆「片足のひざくらいまでズルッと落ちました」

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