ビジネス

欧州自動車メーカーが「EVシフト」をことさら大合唱する理由

「世界最先端のハイテクショー」の評価は?

 東京モーターショーが10月27日に開幕した。今年は各自動車メーカーがこぞってガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトを睨んだコンセプトカーの展示や、運転操作の要らない自動運転技術の最新デモなどを行い、近い将来、クルマ社会が大きく変わりそうな印象を与えている。

 だが、完全EV化や無人運転の時代は本当に間もなくやってくるのだろうか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、100年に1度といわれる自動車業界の変革期に一石を投じる。

 * * *
 東京モーターショーの花形はもちろん完成車メーカーの打ち出す数々のショーカーなのだが、取材陣にとっては世界から集まる自動車業界関係者と気軽にコミュニケーションを取れる貴重な場でもある。

 そのなかでも往々にして自動車にまつわる本音や裏話が聞けるのは、部品業界である。海外の大手部品メーカーも複数出展しているうえ、日本勢もいまやグローバルサプライヤーとしての地位はゆるぎない。

 昨今、クルマは100年に1度の変革期にあると言われている。電動化の導入、自動運転やコネクティビティの実用化などテーマはいろいろ。その技術革新の多くを支えているのは、実は部品メーカーだったりする。ということで、本当に劇的な変化がすぐにでも訪れるのか、技術開発の最前線にいるエンジニアたちをはじめ、ステークホルダーの温度感をきいてみた。

 まずは電動化。欧州でフランス、イギリスなどが次々とエンジン車を廃止する方針を打ち出したり、世界最大市場である中国が電動化車両の比率を一定以上にすることをメーカーに義務付けるという半ば強引とも思える手法で脱石油を図るなど、話題には事欠かない。世界各国のメディアがガソリンエンジンすらあっという間になくなるというストーリーを出している。

 果たして、そういうムーブメントに対する現場の声は、至って冷静なものばかりであった。

「電動化は進む。このこと自体に間違いないでしょう。部品メーカー、とくにメガサプライヤーは求められる技術は全方位にわたってやるというのが使命ですから、もちろん研究開発はやっています。ただ、ヨーロッパが早期にエンジン車をなくし、EVに切り替えていくような方向に向かうかと言えば、ちょっと違うかなと思います」

 欧州系部品メーカーの関係者は語る。

「EVシフトは今までの道路交通のエネルギー供給の仕組みを根底から覆すような大きな話で、やるとしても何十年もかかる。当然、今から社会の制度設計について真剣な議論がなされてしかるべきですが、現地でもそういう根源的な議論はほとんどされていない。今はちょっと熱に浮かされているような感じではないかと思いますね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン