ライフ

【川本三郎氏書評】大阪の小出版社と著者とのきめ細かい交流

涸沢純平・著『遅れ時計の詩人』

【書評】『遅れ時計の詩人 編集工房ノア著者追悼記』/涸沢純平・著/編集工房ノア/2000円+税

【評者】川本三郎(評論家)

 出版社の多くが東京に集中しているなか、編集工房ノアは大阪の文芸出版社として孤軍奮闘している。足立巻一、天野忠、山田稔ら関西在住の作家、詩人たちの本を数多く手がけてきた。ノアのファンは文学好きに多い。

 一九七五年に涸沢純平が創業。当時まだ三十歳の手前。以来、文学書が売れなくなった時代のなか良書を出版し続け、四十年を超えた。その涸沢氏の回想記。それなりの規模の会社と思いきや、奥さんと二人だけの家内工業のような会社であることに驚く。

 小出版社だからこそ、きめ細かく著者と接する。よく著者と会い、酒を飲む。文学談義が最高の酒の肴になる。その熱意、意気に大御所の富士正晴をはじめ、多くの著者に可愛がられる。本が出来上がると、著者のもとに届けに行く。ハンセン病の詩人、塔和子の詩集が出来上がると、瀬戸内の島にある療養所にまで届けにゆく。著者はうれしいだろう。

 大阪の詩人、港野喜代子の詩集が出来た時は、宣伝のために一緒に新聞社や放送局を訪ねる。この時、港野が言う。「こうして回っても、空しいだけや」。詩集がそんなに売れるわけではないことは著者も編集者もよく分っている。

関連記事

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン