「まず、身体がまだまだ元気だった。競輪そのものに関しては詳しくなかったし、車券も買ったことがなかったんですけど、子どもの頃から経験していなくても、上を目指せる競技という話は以前から聞いていた。野球を30過ぎてから始めて成功するなんて、不可能じゃないですか。自転車なら、それなりにトレーニングを積んだ身体さえあれば、ゼロからでも挑戦できるんじゃないかなって」
しかし、競輪選手になるためには、日本競輪学校を卒業し、競輪選手として必要な資格を取得しなければならない。大場の現在の立場は、トレーナーを務める馬渕のもとで、日本競輪学校に入学するための身体作りをしている段階であり、まだスタートラインにも立てていない。
「正直に言えば、競輪の面白さも分かっていないし、将来、競輪で成功するための練習にもまだ、取り組めていません。誰かと走ったこともないし、誰かと比べて自分に才能があるのかどうかも分からない。レースを見ると、競輪選手のパフォーマンスに圧倒されて、こんなすごいアスリートが揃っているのにどうしてプロスポーツとして認知度が低いのかと疑問に思うんですよ。こんなことを言うのはおこがましいですけど、元プロ野球選手だった自分が競輪選手になることで、少しでも業界が盛り上がるのなら、挑戦する意味はあるのかなと。失敗したところで、誰かに迷惑を掛ける話でもないですから」
そんな大場に、馬渕はこんなエールを贈る。
「素質はすごくあります。非常に高い。2020年に東京五輪を控え、競輪が注目される時期にこういう選手が出てくることはとても大切なことのように思いますね。まずは競輪学校への合格が第一。今月(11月)の29日、30日に二次試験が行われ、一次試験免除の大場を含めた21人のうち、5人が合格します。合否が決まる1月までに、反社会勢力との交際がないかとか、身辺調査も行われます。人間性、スター性も考慮され、総合的に判断されます。いざ土俵に上がれば、本人のモチベーションはどんどん上がっていくでしょう」
大場と馬渕の二人三脚の“競輪への挑戦”が始まろうとしている。