──自分以外の写真で選挙ポスターをつくってもよいのでしょうか?
畠山:本人の写真を載せなくてはいけないという規定はないのですが、普通は載せますよね。名前だけしか載せない候補はいますが、他人の写真を載せるのはかなり思い切った作戦です。公職選挙法上は問題がないとしても気になるので、「亀井さんに許可をとったのか」と聞いたら、とっていないと言うんです。選挙に、政治に関心を持ってもらえるのであれば、思いついたアイデアをとにかく実行できるのが山口さんです。
初めて大川さんから紹介してもらった山口さんがこれだけ大胆なのだから、他の独立系候補者たちもきっと、予想を超えているだろうと思って会いに行くと、僕がそれまで思っていた常識の枠では測れない人たちがたくさんいることに気づかされました。すぐに記事にするなどの仕事になるかどうかは別として、選挙と独立系候補は抜群に面白い取材対象ですね。ハズレがありません。みんなスゴいんです。
──とはいえ、仕事になりやすいのは大政党などに所属するメジャー候補たちです。それでも独立系候補にこだわるのはなぜですか?
畠山:理由は様々あります。取材が面白くて楽しいということもありますが、色々な人が選挙に出られる状況が健全だと思うからです。彼らの場合、ユニークな行動に目が行きがちですが、訴える政策には「なるほど」とうならされることも少なくありません。当選者が、落選した独立系候補が訴えていた政策を一部で採用する例もあります。
それに何より、選挙で独立系候補と会うたび、「こんなに自由に生きていいんだ」とエネルギーをもらっています。彼らは総じて明るい人が多く、サービス精神もあるので、真面目な顔で、周囲の人を笑わせようとする。そもそも、選挙に出るということは大変なことです。いくつもの障害を乗り越えて実現させています。だから、どんな候補者のこともバカにすることはせず、簡単に切り捨てないで欲しいです。
●はたけやま・みちよし/1973年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部在学中の1993年より雑誌を中心に取材・執筆活動を開始。関心テーマは政治家と選挙。ニコ生ではイチローに間違えられたことも。著書に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)。取材・構成として『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著、扶桑社)、『10分後にうんこが出ます』(中西敦士著、新潮社)、『新しい日米外交を切り拓く』(猿田佐世著、集英社)なども担当。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作『黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)が発売中。