国内

泡沫候補 その多くは泡のように消えない人たち

選挙で使われるものと同じタスキ着用の畠山理仁氏

 選挙報道で「その他」として小さな紙面や画面にまとめて押し込められる候補者たちがいる。泡沫候補と呼ばれる彼らは、落選を繰り返してもまた、選挙に立候補する。フリーランスライターの畠山理仁氏は彼らを無頼系独立候補と呼び、その独自の戦いを『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)としてまとめ、2017年第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した。畠山氏に、独立候補たちとの出会いとその魅力について聞いた。

 * * *
──先日の衆議院議員選挙のときも多くの候補者が立候補しましたが、そのなかからどうやって無頼系独立候補を探すのですか?

畠山:1180人を一人で追いかけるのは物理的に無理なので、まず、公示日翌日に新聞を広げて立候補者一覧をマーカー片手にチェックしました。無所属をあらわす「無」という字だけを追って、「同じ無所属でもこの人は元民進党だから違う」といった具合に選んで独立系無所属の人をリストアップします。リストができあがったら、その人たちが立候補している地域の選挙管理委員会に電話をして、候補者の連絡先を教えてもらい住所録をつくります。そして、片っ端から電話をかけて選挙活動の予定を聞くんです。

 それから、教えてもらった予定を見比べて、効率よく取材をして回るにはどうしたらいいかを考えます。鉄道マニアが、乗り継ぎをいかに効率よくやるか時刻表を見ながら考えますよね。それと同じようなことを選挙でやっています。というのも、なるべく多くの候補者に会えるようにするためです。国政選挙になると予定を組むのが大変ですが、楽しいですね。

──そもそも、選挙の取材にこだわるようになったきっかけは?

畠山:学生時代にライターの仕事を始めていたのですが、そのときお世話になっていた編集プロダクション代表から頼まれて、地方選挙の手伝いをしたのが強い関心をもつきっかけでした。街宣車に乗ったり、選挙事務所に刻々といろんな情報が集まり散っていく様子を見聞きしたりするのが面白かったですね。票の行方はもちろん、どこで怪文書がばらまかれたとか、その場に居合わせないと分からないことばかりでした。あのとき面白いと感じたことが選挙の原体験となっています。

──その体験は、すぐにライターとしての仕事にもつながったのでしょうか?

畠山:それがそうでもなくて(苦笑)。その後、『週刊プレイボーイ』でニュースのページを担当するようになってから、毎週の企画会議に選挙関連のものを何度も出しましたが、なかなか通りませんでした。取材をして誌面になるころには選挙が終わっているということもありますが、有名ではない誰だか分からない候補者を取材することばかり企画案にしていたからでしょう。

──なぜ、有名ではない候補者にこだわったのですか?

畠山:ネタ探しのために新聞をみると、毎週のように選挙の記事があることに気づきました。記事とはいっても一行情報のような、どこの選挙に誰が立候補しているのか記してあるだけの簡潔なものでした。でも、妙に気になることが書いてあるんです。

 無所属の候補者には、肩書きから人物像を想像しづらい人が多い。たとえば革命家、ディレッタント、路上演奏家など。そういう気になる人を見つけると、他のニュースネタに混ぜて、この候補者に会いに行きたいという企画を会議に出していました。ほとんどその企画は通りませんでしたけれど。

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
大分県選出衆院議員・岩屋毅前外相(68)
《土葬墓地建設問題》「外国人の排斥運動ではない」前外相・岩屋毅氏が明かす”政府への要望書”が出された背景、地元では「共生していかねば」vs.「土葬はとにかく嫌」で論争
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
《悠仁さまの周辺に緊張感》筑波大学の研究施設で「砲弾らしきもの」を発見 不審物が見つかった場所は所属サークルの活動エリアの目と鼻の先、問われる大学の警備体制 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン