ライフ

【関川夏央氏書評】四度の変革を乗り越えた「能」の仕掛け

安田登・著『能 650年続いた仕掛けとは』

【書評】『能 650年続いた仕掛けとは』/安田登・著/新潮新書/760円+税

【評者】関川夏央(作家)

「能」はよくわからない。見れば眠くなる(と思う)。著者安田登は、眠くなっても構わないが、それは近代演劇的な「筋」と「意味」を能にもとめるからだという。能の筋は重要ではなく、能の舞の型に意味はない。観客に望むのは「妄想力=想像力=脳内AR(拡張現実)」だともいう。

 漱石は晩年の十年、謡を稽古した。師は漱石より三歳年少、下掛宝生流の宝生新。安田登の宗家にあたる。著者によれば、漱石『草枕』は能の構造を持っている。

 世阿弥の開発した夢幻能では、旅の僧(ワキ)が見知らぬ人物(シテ)とめぐり会う。それは、この世に思いを残して死んだ人の幽霊だ。僧は幽霊の話を聞き、その「残念」を解き放ってあの世へ帰す。つまり死者の鎮魂。「ワキ」は「脇」ではない。この世とあの世を「分かつ人」、境界領域の人の意である。

『草枕』の「ワキ」は「旅の画工(絵かき)」だ。画工は峠で茶店の老婆(『高砂』の媼(おうな)にあたる)と話す。そこから先は実はこの世ではない。画工が温泉場で会う「那美さん」は気強い生者だが、人生に多くの思い残しがある。思い残しを解いて、表情に「あわれ」が浮かんだとき、画工の「絵」は成就し、那美さんは救われる。

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト