そして、チャグムとともに山道を行くラルーグは、若い皇太子に杖で道を示す。長老と杖。おお、ここは『水戸黄門』のご老公にも通じる。ラルーグから武田鉄矢のさまざまな顔が見えてくる。まさにファンタジー。
もうひとり気になるのが、バルサの幼なじみのタンダ(東出昌大)。子供のころから不思議なものが見えるタンダは、家族から遠ざけられて寂しい思いをしていたが、呪術師になり、薬の知識も深い。シリーズ当初から常に傷だらけになるバルサを何度も助け、治療したのはこの心優しい男なのだ。
東出昌大は、波瑠と共演したドラマ『あなたのことはそれほど』で不気味な夫を怪演して話題になったが、タンダ役では、「バルサー!」と声を1トーン上げて少年のような存在感。どこかとぼけた雰囲気もある。傷も癒せばドラマも癒す。私は『精霊の守り人』視聴者の中には、「隠れタンダファン」が多数いると思っている。なんで「隠れ」なのかは別として、タンダが出てくるだけでほっとしている人はかなり多いはず。
タンダは、子供が生まれたばかりの弟の身代わりに兵隊になった。しかし、敵はスズメバチのようなシマシマ模様が怖いタルシュ帝国。予告の中ではどうやらタンダは戦で命の危機にさらさられる様子。心配だ。タンダファンを代表して大きな声で言いたい。ちょっとちょっと、私のタンダに何すんの!?
タンダはバルサといっしょにいたおかげで危ない目にも何度もあってきた。その間、何回かバルサと平和に暮らすことを提案し、そのたびにはぐらかされている。自然、国家、権力、貧富、侵略…何があってもブレないタンダの純愛。迫力の映像の中に映り込むことのない人の心をキャッチするのが、このドラマのいちばんの楽しみだとじわじわとわかってきた。