「顧客からのクレームのほとんどは悪意によるものではなく、従業員の接客態度の悪さや企業のサービスの質に起因している。
しかし企業側は悪質なクレーマーからの万が一の“最悪の被害”を恐れて、どんなクレームにも杓子定規な対応を取ってしまう。企業やスタッフの警戒感が、かえって普通の顧客を逆撫でしてしまっていると考えられます」
消費者の行動・心理を研究する、関西大学社会学部(社会心理学)の池内裕美教授も、「行きすぎたマニュアル対応」に問題があるという意見だ。
「本来、企業やスタッフは客のニーズに合わせたサービスを柔軟に提供することが理想です。しかし大チェーンの増加や従業員の多様化で、企業はマニュアルによってサービスを均一化している。そのため“店員が客に合わせる”のではなく“客が店員のマニュアルに合わせる”という状況が生まれている。だからこそイライラがたまりやすくなっている」
一方、労働問題ジャーナリストの溝上憲文氏はシニアの意識も問題だという。
「中高年男性は特に“お客様は神様です”という日本の過剰なホスピタリティに慣れすぎているため、どんな店にも行き届いたサービスを求めがち。客の“期待度”の高さが生んでいる現象なのではないか」